信頼残高でPJの危機を乗り越える

どれだけ丁寧に計画を立てても、プロジェクトを進めていく中でトラブルや困難が一切起きないということはまずあり得ない。
仕様の認識違い、想定外の障害、スケジュールの遅延、成果物のクオリティギャップなど、大小はあれど、何かしらの問題は必ず発生する。
問題そのものは避けられないとして、そこから先に解決のしやすさを左右するのが「信頼残高」だと考えている。
 
同じトラブルでも、相手が「まあ、この人たちなら大丈夫だろう」「今回はしょうがない」と受け止めてくれるのか、それとも「やっぱりこの人たちは駄目だ」とプロジェクトが一気に炎上してしまうのかが変わってくる。
信頼残高が十分にあれば、多少のトラブルは残高を取り崩しながら乗り越えられる。逆に残高がなければ、小さなつまずきが致命傷になりかねない。
 

信頼残高で乗り越えるイメージ

PJ進行の中での信頼残高の推移のイメージは以下。
プロジェクト初期にガッと貯め、トラブルが起きるたびに一定消費し、その後の対応や進行の中でまた貯め直す。これを繰り返しながら、長期的には信頼の総量を増やしていくことが理想的だと思っている。
逆に言えば、貯金がないままトラブルを迎えると、そこで残高がマイナスに突入し、PJは炎上。関係の立て直しに多大な時間とコストがかかってしまう。
 

信頼残高をどうやって貯めるのか

具体的にどうやって信頼残高を貯めていくか。大きく以下3つがポイントだと考えている。

当たり前のことをちゃんとやる

まず、仕事として当たり前のことを、ミスなく確実にやっていくことは最低ラインであると同時に、重要である。
  • 会議
    • 会議参加に遅れて相手を待たせない
    • アジェンダは事前に送る
    • 会議後に議事録を整理し、翌営業日までには提出する
  • テキストコミュニケーション(Slackやメール等)
    • 連絡を受領したら、遅くとも24時間以内に返信する
    • 検討に時間を要する場合は、一報まず返信を入れる
  • スケジュール
    • 簡単な依頼事項等含めて、納期を確実に守る
    • 納期が遅れる場合は、事前に連絡の上で合意を取る
・・・等、挙げ始めたらキリがないが、こうした当たり前のことをしっかりやるのがまずは最低限必要だ。
 

相手の期待値を超える

信頼は、当たり前のことをやるだけでは十分には貯まらない。
相手の期待値を上回って初めて、明確にプラスとして積み上がる。期待値を超えるためのアプローチは、主に次の3つ。
  • 相手の知らない情報を提供する
    • プロとして、相手が気づいていない視点での意見やリスク、あるいは業界の動向などの付加価値を提供する
    • 単なる作業者ではなく、頼れるパートナーとして認識されるために、プロとしての見解は必ず必要
  • スピードを意識する
    • 依頼への反応やアウトプットの提出が速いだけで、相手の中での評価は上がる
    • もちろん速ければ良いというわけではないが、速いに越したことはない
  • 品質を高く提供する
    • 期待されているレベルの、一段階上のクオリティを目指す
    • 上記のスピードの意識とのバランスが難しい部分ではあるが、AIが発展し様々なアウトプットに速度を出しやすくなった昨今だからこそ、削減した時間の分を品質向上に使うべき
 

オフラインで会う

AIによって一般的な正解は簡単に導き出せ、オンラインでどこでも会議ができる現代だからこそ、「オフラインで会う」ことによる効果はあると感じている。
実際に顔を合わせて会話をすることで、人柄や熱量、細かなニュアンスが伝わり、信頼の貯まり方が大きく変わる。オンライン中心のプロジェクトであっても、初回のMTGや節目節目で対面の機会を作ることには十分な価値がある。
 
仕事はどこまでいっても、最後に判断するのは人であり、人同士がコミュニケーションを取りながら進んでいく。1人の人間として、好かれて悪いことは何もない。
また、クライアントの人となりを理解することで、ただのクライアントの1人から、1人の人間としてこの人の為なら頑張るかと思えるようになることがある。そうなれると、大変な時期でも頑張りが効くようになり、結果良いモノが作れる。
 

信頼残高は最初に貯めるのが重要

信頼残高を貯めるタイミングとして、最も重要なのがプロジェクトの初期だと思っている。
人は最初の印象をその後も引きずり続ける傾向がある。最初に「この人たちは信頼できる」という印象を持ってもらえれば、その後多少のブレがあっても好意的に解釈してもらいやすくなり、PJが円滑に進行できる。円滑に進行できるため、信頼残高が溜まりやすくなる。
逆に最初の印象が悪ければ、その後どれだけ頑張っても挽回に多くの労力がかかる。
だからこそ、最初の打ち合わせや、そこから1ヶ月程度の関わり方が非常に重要だと考えている。
 
先に挙げた「当たり前のことをちゃんとやる」「相手の期待値を超える」「オフラインで会う」といった信頼の貯め方を、プロジェクトの立ち上がりのタイミングで意識的に実行している。体感的には普段のアウトプットの120%くらいのつもりで気合いを入れて取り組む。
最初の段階でしっかりと信頼残高を積み上げておくことが、その後のプロジェクト全体の安定につながる。
 
 

ここまでプロジェクトを信頼残高で乗り越える話をしてきたが、この考え方はクライアントワークに限った話ではない。例えば転職した際なども同様のことが言える。
新しい環境に飛び込んだとき、最初に信頼を蓄積しておくことが、その後の仕事のしやすさを大きく左右する。その後は多少信頼を消費するような場面があったとしても、トータルとしての信頼の総量を増やし続けていく。
この行動を意識できるかどうかが、長期的に見て周囲からの評価や仕事のやりやすさに直結していく。