相手の頭の中を想像する
会議で自分の説明が伝わらなかった。タスクの依頼がスムーズに伝わらず、何度もやり取りが継続してしまった。顧客への提案が通らなかった。
こうした「噛み合わなさ」の多くは、話す内容そのものよりも、「相手が今、何を考え、何を知っていて、何を気にしているか」を想像できているかどうかに左右される。
ビジネスコミュニケーションにおいてシンプルながらに重要だと考える要素が、「相手の頭の中を想像する力」である。
なぜ「相手の頭の中」が重要なのか
同じ情報を伝えても、受け取る側の前提知識・立場・関心によって解釈はまったく変わります。
- 前提知識の差:自分にとって当たり前の専門用語や背景が、相手にとっては初耳/忘れているかもしれない
- 関心の所在:聞き手の立場によって、気にする観点は異なる
つまり、コミュニケーションの成否は「何を話すか」だけでなく「相手のどのような前提・関心に対してフックさせるか」で決まる部分が大きいと思う。
これは、口頭会話においても、テキストコミュニケーションにおいても、同様。
1. 前提知識の差:相手は何を「知っている」か
自分が知っていることを相手も知っているとは限らない。
何より自分が説明する立場ということは、その話題について深く考えているのは、少なからず説明者だと思う。(そうあるべきだとも。)
説明の前に「この人はこの話の前提をどこまで理解しているか」を考え、前提やこれまでの背景を丁寧に説明すべきか、いきなり結論や具体内容から入って良いかで、説明の準備や話し方が異なる。
この相手が何を知っているかを読み違えると、一通り説明した後に、「そもそも、どういうこと?」「これってXXの話ということで合ってる?」という前提の確認が発生し、こちらの説明内容を理解するまでの会話のラリー数が多くなってしまう。
ディレクターとして日々多くのコミュニケーションをしていて感じるのは、人はそこまで物事を覚えていないということ。これは覚えているはずだと思っても、これはいついつ議論したという内容は覚えていたとしても一部だったり、そもそも全部忘れていたりする。
そのため、自分の場合クライアントに説明する際は、基本的に前提や背景を必ず伝える/振り返りをするようにしている。
明らかに理解度がすり合っている場合を除き、少し丁寧めに説明した方が、結局1回で相手に理解してもらい、その後がスムーズに進む。
2. 関心の所在:相手は何を「気にしている」か
同じ話題の説明でも、立場によって注目するポイントは異なる。
例えばですが、クライアントとの議論の中で要件A→Bのように変更が発生したとする。
その場合、
- マネジメント層:PJ全体のリスク・進捗
- チームメンバー:自分たちの業務への影響
のように、気にするポイントが違う。
チームメンバーへの共有であれば、
- 要件がA→Bに変更
- デザイン影響はXXX、開発影響はYYYを想定
- 後続タスクへの影響・スケジュール観点を確認して欲しい
マネジメント層への報告であれば、
- 要件がA→Bに変更
- 現状の進捗であれば、吸収可能/スケジュール遅延
- 後続のスケジュールにおいて〇〇のリスクが発生する
「相手が今どんな評価軸で物事を見ているか」を想像してから話す内容を組み立てると、伝わり方が大きく変わるはずだ。
相手の頭の中を想像するために
想像力は日々の積み重ねのちょっとした行動で、鍛えることができる。
- チャットを送る前に「これを受け取った相手は、まず何を思うだろう?」と一呼吸置いて考える
- 会議前に、「参加する人たちが気にしていることは何か」を考え、それぞれの立場が欲しい情報を整理できているか思考する
- 会議の資料作成後に、「この記載内容で相手は一発で理解できるか?前提情報が不足していないか?」を考える
これらは特別なテクニックではなく、意識を向ける対象を「自分が何を伝えたいか」から「相手はどう受け取るか」へシフトするだけである。
ビジネスコミュニケーションは、情報の一方的な伝達ではなく、相手にこちらの話を伝えた上で、次にこう動いて欲しいということが必ずある。
説明がうまくなるということは、こちらの意図通りに相手に動いてもらえる=仕事がうまく進むようになるということ。
相手の頭の中を想像して説明することで、今よりも仕事がスムーズに進むようになるはずだ。